たまたま近くの本屋に立ち寄った際にレジの前に置かれた1冊の本が目に入った。

ノーベル物理学賞を受賞した益川さんが本の帯になっていた。値段も手頃だったので購入し、早速読むと、益川さんのものは講演記録のみだったのだが、その中で、テレビのことについて話されている箇所があった。昔のテレビは真空管などが主要なパーツであって、その道に多少精通している人であれば、ここでの真空管はどういう役割をしているかというのがわかったが、今のテレビはあまりにも高度になりすぎて、中身は全くのブラックボックス化し、分解しても中身はなんなのか全くわからない。スイッチを入れたら映りますよというものだけになってしまっている。つまり、真ん中がどうなっているのかわからないから、そこから起こってくるものは「科学疎外」に他ならないと。
この一文を読んだ時に真っ先に思い出したのが、もう10年以上も前に出版されたものだが宇波彰さんの「デザインのエートス」だ。この中に(確か)”プラスチック化する世界”という章があり、もののオーラとも関わる話でおもしろいのだが、いくつかの論考の中に、ものの中身がどんどん高度化し、(益川さんの話と同じように)ブラックボックス化することによって、ものの表面(インターフェイス)がもの自体のパフォーマンスになるというもの(だったと思う。)iPod tuchなどはそのいい例なのかもしれないが、そこからの人とものとの関係性においてどうなっていくのか、という新たな関係性への前向きな感じで論が終わっていたように思う。
ものの中身がブラックボックス化することによって、科学者が教育を語り、哲学者がものと人との関係性を論じているのが、なんとも興味深かった。